TOYOTA 〜 強さの源泉 1 〜

経営

最近、CMにて豊田社長が「守るべきものは、必要なものを作り出す人材です」と語っていた。人材を大切にする、はっきり言って社会人ならば誰しもが一度は聞かされたことはあるフレーズだ。だが、社会の実情はどうか。利益の為に社員を絞り使う企業が多々見受けられる。ブラック企業と呼ばれるものがその例として挙げられるだろう。

さてTOYOTAは、ブラック企業だろうか。この問いに、ブラック企業だ!と回答する方は少数であろう。圧倒的な知名度と国際的なブランド力、不景気の波が押し寄せる中ですら純利益を確保できる経営構造、日本最強のメーカーと評されることも違和感はない。友人の豊田さんがアメリカに行った際、「君はTOYOTAの御曹司かい?」と方々で現地の方に言われたと語っていた。フレンドリージョークなのかはさておき、やはりTOYOTAの認知力は世界規模である。

収益の源泉はどこにあるのか。それは、どんなビジネスモデルにおいても人であることは多くの方に納得していただけるのではないか。生産管理用語に4Mというものがある、Man、Machine、Material、Methodのイニシャルから構成されるものであるが、とりわけ人が最初に挙げられることもその裏付けであろう。

TOYOTAの収益構造の強さ、それはJITを実現する為のカンバン方式などの手法が経営本などでよく取り上げられる。視察にくる方も手法に注目し質問などを投げかけてくるというが、TOYOTA側からすれば目に見える手法などは重要ではなくその手法を考え出す人材こそが重要なのであり、それは特許などで守らなくとも他社には真似のできない強大な模倣困難性を内在しておりTOYOTAの強さの根幹を支えているというのだ。今記事ではこの人材、そして人材を為すTOYOTA流の思考を紹介したい。

徳川家康・三河武士とTOYOTAのつながり

TOYOTAが本社を構える愛知県、かつて三河や遠江と呼ばれた地域であり、江戸幕府の始祖徳川家康と所縁の深い地である。TOYOTAの中には、徳川家康及び家臣団の三河武士の思考「質実剛健」「勤勉力行」「清貧蓄財」「質素倹約」「深慮遠謀」「家内安泰」が受け継がれている。地味に聞こえる言葉だが、地味故に経営の安定を本質で捉えた言葉であり、これが実行される企業が弱いわけがないと言える言葉達だ。同地域からHONDA、ヤマハ、スズキなどの世界に飛躍した企業がいることも少なからず繋がりがあるのかもしれない。

先例を超える

TOYOTA自動車を設立した豊田喜一朗さんは、当時の先進企業フォードモーターのやり方を真似しなかった。当時のフォードは大量生産を主軸にベルトコンベアーを用いて作れる時に大量に製品作り、プロセスごとの仕掛品などの大量の在庫を所持しておくことを最善であるとしており、不良品については最終の製品検査にて一括排除していた。喜一朗さんは、ベルトコンベアーシステムは素晴らしいが、多量のコストをかけて作った製品を最後に排除するのはムダであることに着目し、「ムリ、ムダ、ムラを無くす」というTOYOTA生産方式の根幹を成す思考を築き上げ、ジャスト・イン・タイムを実現する生産方式を作り上げていくことになった。

TOYOTA化する

TOYOTAは、他社から工作機械などを導入する際にはカタログ通りに使用するのではなくTOYOTAに合った仕様に改造して動作させるTOYOTA化をする。TOYOTAでは、TOYOTA化までしなければ仕事をしたことにならないとされている。またそれは、機械に限らず人材育成やソフトウエアにも適用されTOYOTAのユニーク差、差別化の源泉になっている。

本質と根本

先程のベルトコンベアーシステムとJITの関係であるが、喜一朗さんは単純にベルトコンベアーシステムを導入するだけでなく「何の為にベルトコンベアーを使うのか」という本質と根本について考えた。その答えは「正しく生産されたモノを途切れず流すこと」であった。そしてそれを実現させる方法こそがJITの究極の姿であるという思考に繋がった。この本質と根本に立ち戻って考えるというのもがTOYOTA化の根本にある。

目的から根本に至る

カンバン方式の生みの親として大野耐一さんという方がいらっしゃる。大野さんは、問題には「なぜ?」を5回問いかけろと指示をされていた。なぜ5回も繰り返すのか。問題に5回なぜをぶつければ、問題から不要な殻が無くなり本質が見えてくるという。例えば、車体の塗装膜が均一にならないという問題があれば、塗装機械に問題があると1度目のなぜで応えを返します。では、なぜ塗装機械に問題が出るのか、そこを追求していくとそもそも塗装機械の問題では無く、塗装時の室温や湿度により塗料そのものに若干の変化が起こる為ムラが生じているという根本に至る。端的に言えば、目に見えている問題と解決すべき問題は異なっていることもありそれを見極める為に「なぜ?」を5回問いかけろという。

TOYOTA生産方式は最強か

ある企業がTOYOTA生産方式を導入することを検討していた。TOYOTA生産方式の原則に基づき在庫を無くすことを検討していた。だが、そもそも在庫を無くすことの目的は何であるかというなぜ?を繰り返していくうちに、お客様の手元に必要なものを必要な時に必要なだけ準備することが最善であることに至った。在庫を無くすことはむしろお客様の不利益につながるのであった。つまり、TOYOTA生産方式の導入が最善なのではなく、TOYOTA式の思考習慣の導入が最善であったのである。

                                  次回に続きます

参考文献 日比野省三著 「トヨタの思考習慣」 講談社

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